幼稚園から大学へと職場を移動して、強く感じることは、幼稚園時代にあんなに生き生き、明るく、仲良く、喜んで生きていたはずの子どもたちが、小・中・高校の過程を経て大学で、その輝きを失っているように思うのです。子どもの時代にできていたことが、勉強し、成長しておとなになったはずなのに、失われている。特に自分に対する信頼、自己肯定感が失われているように感じます。
財団法人日本青少年研究所が日・米・中・韓四ヶ国の高校生を対象に実施した意識調査で、「自分が価値のある人間と思うか」との問いに「全くそうだ」と答えた割合は米国が57.2%中国42.2%、韓国20.2%に上った。しかし日本はわずか7.5%で、「まあそうだ」を含めても36.1%と、七?八割台だった米中韓に比べて自尊感情の低さが目立った、という報告があります。これはとても深刻な問題だという見方もありますが、私はそれほど悲観していません。なぜなら、自己像は、自分自身が作っており、周りの身近な人々の影響で形作られているからです。自分が自分についてどう思っているかですから、自分がその見方を変えれば、自己像はあっという間に変わるのです。周りの人がどう思うか、周りの人がどう評価するかは二の次で、まず自分が自分のことを大好きになること、身近にいる人々がそれを支持すれば、自己像は確実に変わります。
親や教師は、「君は大丈夫。信頼しているよ。かけがえのない人なのだから。」と子どもを信頼し続ければ、良いだけです。これを行うのが難しいと思えば、実現は難しくなるし、素直に受け止めて実行すればそうなっていくだけです。大人である自分自身の側の素直さも問われることです。
私たち大人にとって、親や教師からもう声をかけられることはまれでしょうが、毎日、毎日、信頼しているお方からは声をかけられています。「君は生まれてきてよかった。君はかけがえのない存在だよ。信頼しているよ。」と。この信頼を受けて私たちクリスチャンは生きています。
聖書では「神の愛」「恵み」「神からの賜物」などいろいろな表現がされていますが、私は「神さまからの信頼」だと思っています。その信頼に基づいて、それをいつもできるだけ意識して、自分でしっかり考え、判断して、自分で選んで、進んでいきたいと願っています。
「わたしは、とこしえの愛をもってあなたを愛し/変わることなく慈しみを注ぐ。」
司祭 テモテ 宮嶋 眞