ミニコラム:イコンのあれこれ

聖職候補生 ダビデ 梁權模

前回のミニコラムにおいて、「イコンとは何か?」という主題と、またイコンが持つ「信仰における意味」について述べました。今回のミニコラムにおいては、『イコンの神秘的な言葉』という本を参照しながら、イコンのあれこれについて少しずつ述べていきたいと思います。

イコンとは、ギリシャ語で「画像」「イメージ」を意味する言葉である「εἰκων」(エイコーン)から由来しました。あらゆる正教会の美術においては、イコンのコンセプトが含まれていますが、英単語としての「イコン」とは、あらかじめ手入れしておいた木の板の上に、テンペラの顔料で描いた正教会の伝統絵画のことを指します。

イコンはギリシャやロシアにおいて公認されたデザインや伝統的なモチーフをもとにして制作されます。とはいえ、イコンを制作することは、的確な写本を「頑固に」作ることではなく、作家がモデルとなっている事柄との「創造的な会話」に入る中での「再創造」の過程です。

イコンにおいて重要視されるのは、イコンが神様のまことの教えを「語る」ことである、ということです。すなわち、イコンは神様への信仰を絵画という形で表したものではなく、むしろ聖書の教えを信徒に分かりやすく伝える役割を持たなければならない、ということです。

そのため、イコンにはある一定の「型」を守って「制作」されることになります。すなわち、描かれているモデル、人物やとある事柄が伝えようとする神様からの教えの言葉を正しく伝えるするためです。もしも、イコンの作者が自分の解釈や思いなどをイコンの人物や事柄の中に入れ込んでは、イコンに内在されているその教えの言葉が歪められる可能性があるからです。

ですが、前述したとおり、イコンを制作することは「完璧な写本」を作ることではありません。現代にいたるまで、様々なイコンが制作され続けてきましたが、それらのイコンがすべて「全く同じ形」のコピーではないことは、私たちがイコンを眺めるときに確認できます。

その例として、今回は「全能者ハリストス」という型を用いている画像を二つ、紹介しようと思います。

この型は、キリストが再び来られるとき、栄光の姿で現れるであろう、ということを語ろうとしています。「全能者」として訳されている、ギリシャ語の「παντοκράτορ」(パントクラトル)とは、旧約における神の名前の一つである、「万軍の主」のギリシャ語訳です。

さて、末尾に乗せている「全能者ハリストス」の画像ですが、皆さんは二つの画像から、どのようなキリストを感じるのでしょうか。また、どちらのキリストの方が、「私にとっていいかも」と思われるのでしょうか。これらのイメージから、それぞれ感じたこと、思われたことなどを、一緒に語ることができれば、と思っております。

左:「全能者ハリストス」、アヤソフィア聖堂のモザイク。

右:「全能者ハリストス」、聖カタリナ修道院所蔵。最も古いイコンとされている。

※今回のミニコラムにおいては、ソルルーン・ネス著「The Mystical Language of Icons」(イコンの神秘的な言葉)から一部抜粋しました。

※2023年7月2日の週報のミニコラムより